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国立大学の独立行政法人化に断固として反対する(声明)

 文部省は9月20日,独立行政法人通則法(99年7月8日成立)のもとに国立大学を独立行政法人化する方向で検討を行うことを明らかにしました.
 独立行政法人は,橋本前総理の主導によって始まった「行政改革」の一環として構想された組織です.国家行政の末端を担う組織として,その制度設計には,主務省による強い統制と絶えざる効率化と減量の追求が盛り込まれています.すなわち,1.主務大臣による中期目標の指示と,それに基づく中期計画の策定,2.主務大臣による長の任命,罷免,3.主務省内におかれる評価委員会と総務省内の審議会による年度毎,中期計画毎の評価と,それに基づく組織の見直し(存廃,民営化を含む),4.評価の主眼が効率化と予算・人事の減量に置かれること,5.財務諸表に対する監事および会計監査人の監査,評価委員会の意見,主務大臣の承認,官報への公示など財務・会計の厳しい監視,などです.このような制度を有効に活用できる行政機関もあるでしょう.しかし驚くべきことに,この制度が,効率追求や減量とはおよそ相容れない,病院,美術館,博物館,研究所そして大学に対して適用されようとしているのです.
 組織設計と適用対象の矛盾は明らかであり,全大教をはじめ,各大学の職員組合,あるいは科学者会議などが,国立大学の独立行政法人化に反対を表明しています.また,多くの大学人が新聞雑誌上に,独立行政法人化への懸念と高等教育の充実を求める意見を発表しています.さらに,国立大学協会第1常置委員会は,現行通則法の修正もしくは特例法を定めることを骨子とした条件案をまとめたものの,去る9月13日の国大協臨時総会では,これをあくまで万一法人化する場合の条件であるとして,法人化に反対の姿勢を示しました.こうした動きにもかかわらず,文部省は現行通則法を適用し,個別法でいくつかの特例を定めるとした方針を示し,法人化受け入れを迫っています.
 通則法の個々の条文と大学組織運営との矛盾もさることながら,これがあくまで「行政改革」の一環としての,減量・効率化のための政策であることを認識すべきです.一部マスコミには,独立行政法人化が大学改革の一環であるかのように捉え,大学の自律性を高めるためであるかのような誤解を抱く向きもあり,また文部省もそのような詭弁を弄していますが,経緯が明らかに示すように,この構想は学問とも教育ともまったく無縁のものです.現在進められようとしている「行政改革」のもとでの法人化は,表面をどう取り繕っても,財政的人事的減量を目的としたものでしかありえません.絶対的貧困のもとでの生き残り競争に投げ込まれたときに,大学間,学部学科間の格差が広がり,多くの地味だが重要な学問分野が見捨てられることとなり,また,あらゆる職種に労働強化と給与抑制が押し付けられるでしょう.
 国立大学が責任をとるべき対象はあくまで国民であり,その責任とは,充実した高等教育を保証し,世界水準の研究を続けていくことです.それを実現するための改革に対して,わたしたちは努力を惜しむものではありません。しかし、土地金融政策の誤りと公共事業の乱発による財政赤字の責任を引き受けることは断固拒否します。わたしたちは、国立大学への独立行政法人制度導入を阻止し、わが国の高等教育制度と学問・文化を守り発展させるために、学内外諸団体・国民各層と共同しあらゆる取り組みを進める決意です.

1999年9月22日
東北大学職員組合執行委員会


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