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大学審議会答申の法制化に反対する(声明)

−「学校教育法等の一部を改正する法律案」の国会上程にあたって−

1999年4月1日
東北大学職員組合執行委員会

 政府は、大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(199 8年10月26日)を受け、1999年3月9日に「学校教育法等の一部を改正する 法律案」として閣議決定を行ない同日国会に上程しました。私たち東北大学職員組合 は、大学審議会答申が、大衆化・国際化が進み益々重要度が増している大学の発展お よび学生の成長を阻害し、学問の自由をも否定することにつながることを指摘してき ました。そして高等教育の目的、運営原則、自治、公共責任、教職員の権利と自由と 義務と責任、雇用条件について広くしかも端的に提言したユネスコの高等教育世界宣 言を尊重するよう訴えてきました。今回の「法律案」は、大学審答申の「組織運営体 制の整備」のための「法制化」であり、その内容には、以下のような重大な問題が含 まれていると考えます。

1.全体として、大学構成員の意思決定に及ぼす力を弱め、「社会的要請」という名 目での行政の介入を招くものであり、学問の発展の基盤である「学問の自由」を制度 的に保証してきた種々の「大学の自治」の制度を根本的に破壊する制度改悪であると いわざるを得ません。

2.「運営諮問会議」については、委員の選考、任期、権限等があいまいであり、「 議事の手続き」は省令で決められるなど、大学運営への関与の歯止めがありません。 また、その審議事項についても、「教育研究上の目的を達成するための基本的な計画 」、「教育研究活動への評価」、「その他大学の運営に関する事項」となっており、 きわめて包括的です。このような機関が大学の運営に「勧告」権を持つことは、大学 が、その運営に自らの構成員の意思を反映できなくなる危険性を指摘せざるを得ません。

3.教授会の審議事項の限定は、新学部構想や学部・学科の改組、キャンパスの移転 などの全学的課題について学部教授会で審議できなくなる危険性を含んでいます。ま た、教授会についても「議事の手続き」という条項を設け、文部省令で「議事手続き その他これらの組織に関し必要な事項」を決めることとなっており、大学運営への行 政の介入の道を広げています。また、人事についても学部長、評議会の権限が大幅に 強化され、学問の内発的な要請に基づく人事が妨げられるおそれがあります。

4.評議会については、その位置付けを明確化するとともに大きな権限を与えていま す。ここで重大なのは、従来、部局長とともに評議会の構成員であった学部代表の教 授の枠がなくなり、代わりに学長指名者が加わっており、構成としては学長指名者が 多数を占めることも可能であることです。このような評議会の変質は、大学構成員の 意思にもとづく運営を脅かすものとなるでしょう。

 大学が社会への「説明責任」を問われていること、大学が社会的要請に応えること を私たちも重要視しています。また、今日の大学運営に、非効率的な部分があること は否定できない面もあります。しかし、その解決はあくまで大学構成員の意思に基づ き、自主的・民主的に進められるべきでありましょう。現に、東北大学においても、 また、多くの国立大学においても、改革が進められている最中であります。こうした 自主的な改革の動きを踏みにじるような形での今回の法改正は、決して大学の創造的 発展に繋がるものではないことを、私たちは強く主張するとともに、法案の事項を当 事者間(学内)で議論をする時間を全く与えずに、極めて拙速に上程したことに強く 抗議します。加えて、この法案の内容が、国立大学の独立行政法人化への、大きな足 がかりとなることに対して強い懸念を表明するものであります。


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