質問状に対する東北大学総長からの回答を受けて
-再度の公開質問状-

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2017年11月7日

国立大学法人東北大学 総長
里見 進 殿

国立大学法人東北大学職員組合
執行委員長 片山知史

9 月 27 日の公開質問状「有期雇用職員の無期転換問題に関する質問状」に対して、10 月 31 日に 文書にて回答をいただきました。激務の中ご対応いただいたことに感謝申し上げます。しかしながら、その内容は前段の文章を無視して純粋に3つの質問にのみ官僚的に答えているような印象を受けています。総長ご自身の言葉で答えてほしいという当方の要請に応えていただいたものとは思われません。回答の内容も、依然として更新期待権、無期転換権の剥奪を前提としており、当該の准職員・時間雇用職員の方々の境遇や気持ちに向き合っていただいた言葉がどこにもないことに大変失望しています。したがって、私たちの質問に正面からお答えいただけますよう、再度お伺いします。

質問(1)「東北大学は、学問の府として、法令順守に関しては社会に対し正しい規範を示すべきであり、法の趣旨を潜脱するような行為を行うべきではないと考えられますが、如何お考えでしょうか。」への回答について

 この質問で指摘した「法の潜脱」に対しては、「法令遵守は当然」との回答でした。私たちも、大学側の人事制度案が「外形的には法の文言に沿ったもの」であると認めています。その上で「法の趣旨」を潜脱していることを問題にしているのです。
 10年以上働き続けることができたこれまでの実質的な人事制度を変更して、一律に5年で雇い止めすることは雇用安定化を目指した法改正の趣旨に沿っているのでしょうか。選択の余地のない状況で満5年での雇用終了に同意の署名をさせ更新期待権を剥奪することは遵法的な姿勢でしょうか。
 厚生労働省は「無期転換ルールを免れる目的で雇い止めをしているような事案を把握した場合には、都道府県労働局におきましてしっかりと啓発指導をする」と国会で答弁しており、法改正の施行通達には「無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等有期契約労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、法第18条の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解される」と明記されています。また文部科学省もそれらの答弁・見解を受けて、「無期転換を避けることを目的として無期転換申込権が発生する前に雇い止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいとは言えない」という事務連絡を各国立大学法人に出し、その趣旨を重ねて強調しています。
 この質問での「法の潜脱」の指摘は、法改正を踏まえて大学当局が推進してきたことが、はたしてこれらの要請に応えたものと言えるのか、法の趣旨に則っているのかを問うているのであり、それらに応え、則ったものでないならそれを正していただきたいということです。

質問(2)「限定正職員になる以外には5年以上の雇用を認めない現方針のもとで、現場で起こっている混乱をどのようにお考えでしょうか。」への回答について

 この質問で指摘した「現場の困惑と予期される混乱」については、「従来から学内において説明を重ねてきたものであり、現場で混乱が起こっているとは認識しておりません」との回答でした。また、当方が指摘した「予算措置のない限定正職員制度の導入によって、まさに各部局が混乱していること」については言及すらありません。
 しかしながら、「全員が3種類の限定正職員のどれかには応募できる」と説明されたにもかかわらず、応募を認められなかった職員が多数存在するのは混乱ではないのでしょうか。パソコンとは無縁の職種の方がにわかにパソコンでの受験を強いられ手取り足取りで受験するのは混乱ではないのでしょうか。限定正職員の採用規模も示さず合格発表日程も不明瞭なまま就業規則さえ決まっていないなかで募集が行われ、現場では次年度の職場をどう回すか頭を悩ますという事態は混乱ではないのでしょうか。
 いずれも組合に実際に寄せられた事例です。そして今も日々痛切な声が届いています。これらは、いずれも法律通りの無期転換を認めていればまったく必要のない混乱だったのではないでしょうか。総長におかれましては、長年働いてきた有能な方に、次年度も同じ仕事があるにもかかわらず雇い止めを通告する部局の人事担当者の苦悩、そしてそれを言い渡される職員の屈辱と絶望が、職場にどのような効果を及ぼすのか想像していただけないでしょうか。真摯な回答を求めます。

質問(3)「現方針のままでは、今後ますます、東北大学に有能な人が集まることを阻害する効果を及ぼすと危惧されますが、それについてどのようにお考えでしょうか。」への回答について

 この質問で指摘した「人材の流出」については、限定正職員制度が「むしろ本学に有能な人材が集まるという効果が期待できる」との回答でした。誤解のないよう申し上げれば、限定正職員制度は、しっかりとした予算措置のもと待遇改善という本来の目的に沿って運用されれば良い制度であると私たちも評価しています。私たちが問題にしているのは、なんらの予算措置もないまま、その目的を違えて「必要な人材を確保する」ために使わざるをえなくなっていることです。
 「安心して働き続けることができる。意欲と能力があればより高く処遇される」という職場は魅力的でしょう。しかし東北大学は「法に明示された無期転換権という労働者の権利をあらかじめ剥奪した職場」「5年たったら辞めるか試験を受けなければならない職場」「受験さえ認められないこともある職場」になろうとしているのです。それは労働者にとって魅力ある職場と言えるのでしょうか。

 総長の役割は、制度の細部を考えることではないことは我々も承知しています。しかし、人事制度の設計を、大学構成員全員のパフォーマンスを十分に発揮できるものとすることについては、総長に大きな責務が課せられていると考えます。あらためて、上記の質問に対する里見総長のご見解を、ぜひご自身の言葉でお答えいただけますようお願いいたします。激務の日々であることは承知しておりますが、総長からのご回答を11月17日までに頂けますようお願いいたします。この文書につきましても、公開質問状として学内外各層に公表いたします。頂いたご回答もまた、公表させて頂くことをご承知ください。よろしくお願いいたします。


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