東北大学職員組合の要求と提案

　職員組合は、教職員の雇用を守り労働条件を改善するための基本的な「要求と提案」を作成しました。一つは「政府に対する要求」です。これは、使用者側＝法人と共同して運動できるものです。もう一つは「法人に対する要求・提案」です。できるだけきめ細かく要求と根拠を掲げるとともに、必要に応じて対案を示しました。組合はこの要求と提案にもとづいて、積極的に政策活動や団体交渉をすすめていきます。知恵は現場にあります。みなさんの「要求」と「提案」をぜひ組合にお寄せ下さい。

1. 運営費交付金を毎年自動的に削減する「効率化係数」や病院に儲けることを強制する「経営改善係数」の廃止を求めること。

　効率化係数1％と経営改善係数2％による予算圧迫は、大学と附属病院の機能を脅かすに至っています。さらに効率化係数を3％に引き上げる動きもしばしば浮上します。これ以上の削減を食い止めるために、政府へのあらゆるはたらきかけを行っていくのが経営者の責任です。

2. 人件費総額を2006年度～2010年度の5年間で5%削減する政策の廃止を求めること。

　効率化係数、経営改善係数に加えて、人件費総額の削減攻撃がかかっています（行政改革推進法）。このため、大学は自主的な予算設定を制約され、たとえお金があっても必要な教職員を配置できないという異常な状態に置かれています。各部局でも、配分された教員人件費の一部が、実際には教員人件費として使うことができません。研究・教育活動を歪める人件費削減強制を中止させるべきです。

3. 学生の入学金や授業料等の学生納付金の基準額の引き上げを行わず、むしろそれを引き下げるよう政府にはたらきかけること。

　これ以上の学生納付金の引き上げを行わず、むしろそれを引き下げることによって、優れた人材が経済的負担に耐えられないため大学進学をあきらめるようなことがないようにするべきです。そして、大学に対しては、納付金の引き上げを行わなくとも機能を維持できるように運営費交付金を確保すべきです。まして、納付金基準額の引き上げ分だけ運営費交付金を削減する政府方針は、大学の経営の安定と自主性を顧みないものです。

1. 運営費交付金の拡充について、前掲の組合要求を支持し、労使協力して政府に働きかけること。

　欧米先進国における例からしても、大学の充実のためには、運営費交付金の削減などはもってのほかで、逆にその拡充がぜひとも必要です。この点では役員会も組合と同じ立場に立てるはずです。

2. 役員出向、すなわち国家公務員への復帰を前提とした東北大学役員への就任をなくし、国立大学法人の独立性を守ること。

　法人化以来、国家公務員への復帰を前提として東北大学の役員となるケースが続いています。こうした役員は、文部科学省から独立した東北大学の立場に立つことが困難です。また、教職員には法人化以後、解雇リスクを負わせておきながら、経営責任を負うべき役員が、帰るべきポストがあってリスクフリーだというのはまったく理屈に合いません。役員出向による役員就任は廃止し、現に役員出向している役員は、国家公務員を完全に退職して、東北大学の役員職に専念すべきです。

3. 総長・役員会が構成員のチェックを受けるガバナンス体制を構築すること。

　ガバナンスとは、組織がどのような目的を達成するために、誰の利害に基づき、どのようにコントロールされるかを意味する言葉です。ガバナンスを機能させるためのポイントは、経営者の勝手な行動を許さずに、これをチェックすることにあります。国立大学法人の場合、株式会社とは異なって株主はいませんし、設置者である国が経営に介入することは望ましくありません。ですから社会からの監視と意見を尊重しつつ、大学構成員によって総長を選出し、その行動をチェックすることが必要です。最近発表された『「ガバナンスシステムの在り方」検討プロジェクト・チーム』報告書では、経営者の言うとおりに構成員を行動させることを「ガバナンス」と称していますが、完全な誤用です。また、それで良い研究・教育ができるはずがありません。必要なのはむしろ総長・役員会の行動を構成員がチェックし、総長が自らの行動を社会に対して説明することです。

4. 重要事項について、教育研究評議会での審議、各部局への情報開示を徹底すること。

　重要事項が理事・副学長会議や、総長室、「プロジェクト・チーム」で審議され、教育研究評議会や部局に情報が流されない傾向が強まっています。十分な情報開示と教育研究評議会での審議がなければ経営の透明性は保てず、構成員の信頼を確保することができないでしょう。

5. 研究・教育の専門性に基づく部局の自治を尊重すること。

　総合大学である東北大学の各部局は、研究・教育の専門性に基づいて組織されています。部局教授会による教員人事や、部局長の選出は、研究・教育の専門性に基づく自治であり、今後とも守られるべきシステムです。研究・教育活動は、自発と創意に基づいて行われるものであり、総長・役員会の意志を上から押しつけることでは志気もパフォーマンスも上がりません。

6. 教授会が設置されていないセンター等の研究・教育組織においては、教員会議での情報開示と審議を重視すること。

　センター等の専任教員は、教授会がないため全学の情報入手に困難を来たしています。また、センター長や一部教員への過度な権限集中によって、研究・教育の自主性を制約されています。センター等の研究・教育組織については、教員会議での情報開示と審議を重視するように、制度と運用を改めてください。

7. 次期中期目標・中期計画策定にあたって、教職員の意見を十分に反映させること。

　次期中期目標・中期計画の策定作業が始まっていますが、教職員一般からの意見公募が行われていません。「井上プラン」を上からブレークダウンするだけではなく、今後の東北大学で実際にはたらく教職員の意見をくみ上げた計画とすべきです。

8. 総長裁量経費の比率引き上げを中止し、その透明性を高めること。

　大学予算に占める総長裁量経費の比率が引き上げられています。しかし、その使途については、「戦略的に」用いるなどと言われるばかりで、不透明です。戦略的とは大学全体の将来を見すえることを言うのであり、総長・役員会が恣意的に用いることではありません。総長裁量経費の比率引き上げを中止し、その使用については透明性を高めるべきです。

１）職種に共通する要求と提案

1. ボーナスの年間支給率の引き下げを行わないこと。労働条件の不利益変更を提案する場合、労働契約法にもとづいて、十分な団体交渉と説明、本学における必要性、代償措置等についてきちんと責任を果たすこと。

　6月ボーナスの「凍結」は、人事院勧告にしたがうのみで、「凍結」措置自体の説明不足、本学における必要性、代償措置などをふくめ、不利益変更を就業規則によって行う場合に労働契約法のもとめている説明責任をはたさずに強行されたものでした。労基署への届出のみを優先して、意見聴取過程での多くの指摘に答えないという問題もありました。教職員はなんらの合意もしないのに、給与の全額払い原則に反してボーナスの一部が支払われませんでした。就業規則改正手続きとしても、誠実な団体交渉としても、労働契約の変更としても多くの問題を残しました。12月ボーナスにむけて同じことが繰り返されてはなりません。また、この「凍結」をもって8月の人勧による年間支給率の引き下げが折り込み済みだとするような横暴は許されません。

2. 教職員の賃金について切り下げを行わないこと。

　法人化以来、教職員は改革に奮闘し、効率化の圧力に耐えてきました。ところが、国家公務員時代と比較すると、教職員の一時金の支給率は0.1カ月改善されたものの、基本給の水準や、退職手当を含めた生涯賃金は大幅に切り下げられています。

　法人側は、給与改訂のたびに人事院勧告にあわせることばかりを強調し、東北大学の財務状況と無関係にボーナス凍結提案を行うなどの、自主性がない、不誠実な態度をとっています。これでは教職員の意欲や志気を落とす一方です。

3. 教職員の一時金を0.1カ月引き上げ、年4.6カ月とすること。

　法人化とそれ以後の体制整備・改革のために、教職員はたいへんな過重労働を強いられました。この苦労に報いることは経営者の努めではないでしょうか。一時金は法人化の時点で4.4カ月でしたが、組合の0.1カ月増要求が段階的に実現し、現在は4.5カ月となっています。さらに0.1カ月の引き上げを、3月の期末手当を復活して実施すべきです。

4. 不払い残業をなくし、超勤手当を労働基準法と業務実態に基づいて全額支給すること。

　労基法の下では、上司の業務命令が発せられているか否かにかかわらず、実態に即して割増賃金を受け取る権利が発生します。歴代の人事担当理事も以前からこのことを繰り返し確認し、「サービス残業があってはならない」「管理監督者において時間把握に努め、時間外労働の実態にあった適正な超過勤務手当を支給するよういっそうの徹底をはかる」と言明しています。しかし、実際には旧人事部や医師の不払い残業が労働基準監督署から指摘される有様です。超過勤務手当を実態に基づいて支給すべきです。

5. 役員会の責任において業務改善を行い、超過勤務を削減するためのアクションプランを、組合と協議しながら早急に策定すること。

　深刻な超過勤務が蔓延し、それが実質的には「サービス残業」となっています。役員会は、アクションプランを作成して解決すると再三言いながら、有効な手だてを取っていません。ぜひとも重点施策としてとりくむべきです。

6. 終業時刻を17時に戻し、実労働時間を短縮すること。

　2009年度の労働時間細則改定は「休息時間」を「休憩時間」に置き換えただけで、実労働時間を短縮しませんでした。労働基準法は最低限の基準を示したものであり、大学がそれにとどまっているべきではありません。日本企業でも勤務時間は短縮の傾向にあり、人事院も国家公務員の勤務時間短縮を実施しました。標準の出勤時刻を8時30分、退勤時刻を17時とすることを求めます。

7. 育児支援措置を、必要な人員補充計画をもって拡大すること。

　仕事に追われて出産・育児がままならない状況を改善しなければ、少子化問題の解決はおぼつきません。扶養手当の引き上げ、保育所の増設と定員の拡大に努力すべきです。人員不足から育児短時間勤務の実施が困難となっている問題は、コンプライアンスにかかわる経営者の責任です。次世代育成支援対策推進法（2005年4月1日～2015年3月31日）にもとづく第1期の東北大学一般事業主行動計画（2005年4月1日～2010年3月31日）について、実現状況を公表すべきです。

8. 未取得有給休暇の積立によるセーフティネット休暇をつくること。

　法人化後の業務負荷急増のため、職員が年休を取りたくても取れない状況が存在します。実質的に年休取得権の行使が妨げられており、経営者のコンプライアンス上、深刻な事態です。しかし、取得しきれなかった有給休暇は、２年たつと繰り越せなくなってしまいます。使用者の責任の取り方としては、事後的に買い取ることもあり得ます。組合は、大学独自の措置として、取得しきれなかった有給休暇を積み立て、育児、介護、体調不良、病気や事故の際の給与保障期間の延長に使えるセーフティネット休暇とすることを求めます。

9. 長期勤続者のリフレッシュ休暇と自己啓発休暇を新設すること。

　現在多くの企業や自治体で長期勤続者にリフレッシュ休暇を与えています。東北大学もこれらの制度をぜひとも取り入れるべきです。さしあたり25年勤続者が土曜、日曜の休日を含め連続7日間休めるよう、5日間の有給休暇を与えることを要求します。

10. 教職員の女性比率に関する男女共同参画の目標達成に努力すること。

　東北大学は、全国の大学に先駆けて男女共同参画社会の実現に邁進しています。しかし、そのかけ声とは裏腹に、教職員全体に占める女性教職員の比率は決して多くありません（2008年8月1日現在、正職員について、男性3,816名、女性1,766名、女性比率31.6%）。また2000年に国大協は「2010年までに国立大学の女性教員比率を20％に」引き上げるよう提言していますが、本学の教授、准教授、講師、助教、助手に占める女性の比率は9.3％に過ぎません（2008年8月1日現在）。これを是正するためのアクションプランの策定が必要です。

11. 駐車場・駐輪場の運営は、教職員への不適切な負担なく、また温室効果ガスの排出削減に効果があるように行うこと。

　業務上不可欠な駐車場・駐輪場の利用について、教職員から料金を徴収することは不適切です。また、不可欠な利用は料金を徴収されても減少しませんから、CO₂の排出削減にもなりません。CO₂排出の削減をめざすためには、自家用車の利用のうち、その必要性が低いものから順に削減されるような制度を設計すべきです。また、業務によってキャンパス間移動をする場合には、交通費やタクシー券等の保障をすべきです。

２）教員

1. 教員の身分保障について、教育公務員特例法の水準まで回復させること。

　国立大学の法人化に際して教員も非公務員化され、その身分保障が大幅に後退させられました。とくに組織改編等に伴う職種転換や出向については、実際に大きな危惧が生じています。教育のもつ意義を踏まえ、教員の身分を変更する場合には教育研究評議会の議を経ることを要件とする等、少なくとも教育公務員特例法の水準にまで回復させるべきです。

2. 助教の処遇を改善すること。新給与表を設けること。

　助教は自立した研究・教育者であり、授業を正式に担当することもできます。その職務は旧制度の助手よりも重く位置づけられ、また実際に重責を担っています。仕事の重さに見合った処遇改善が必要です。

　具体的には、教育職（一）の給与表に置いて、助手と講師の間に助教のための等級を設けて、助手と講師の中間の給与を支給すべきです。

3. 助教の処遇を改善する緊急措置として、給与調整数2を助教に適用すること。

　本学の「本給の調整額支給細則」には、「大学院担当を命じられた者のうち、大学院研究科等の博士課程を担当する者」の給与調整数を２とすることが定められているにもかかわらず、実際には、法人化前からの授業単位数や主任指導の有無で運用されており、ほとんどの助教には旧助手と同様の1しか認められていません。助教の職務を正当に評価し、ただちに給与調整数2を適用して、給与を改善すべきです。

（参考）現在の「大学院担当を命じられた者のうち、大学院研究科等の博士課程を担当する者」の運用（法人側資料をもとに組合にて編集）
基礎講座に所属する場合			基礎講座に所属しない場合
授業単位数	主任指導有	主任指導無	授業単位数	主任指導有	主任指導無
1単位	調整数2	調整数0	1単位	調整数0	調整数0
2単位以上	調整数2	調整数2	2～3単位	調整数2	調整数0
2単位以上	調整数2	調整数2	4単位以上	調整数2	調整数2

4. 教員の個人評価について、客観性、納得性、透明性を高め、慎重に進めること。

　教員の個人評価が進められていますが、客観性、納得性、透明性を高めるために工夫が必要です。ミニマム研究・教育条件の保障、学問特性を踏まえた指標の柔軟化、成果による評価と職務の重さによる評価の関係、評価結果のフィードバック、ハロー効果の抑止、研究費と給与の関係などについて、よく議論をする必要があります。

5. 再雇用制度案を撤回し、教員の定年年齢を65歳まで引き上げること。

　すでに国立大学の大半は65歳定年となっており、旧帝大では東京大学と九州大学が65歳定年を実施済みで、京都大学も定年延長の方針を決めており、その他にも検討を行っている大学があると伝えられています。定年を延長せず、処遇水準の低い再雇用制度などにすると、東北大学が優れた人材を確保する上での困難が大きくなります。若手教員が、将来の東北大での処遇に希望が持てずに早期に転出するという問題も生じるでしょう。

３）事務職員

1. 文部科学省からの職員受入れを規制する明確なルールを設け、いわゆるプロパー職員の昇進機会拡大につとめること。

　文部科学省をはじめ、外部から派遣される職員が、国立大学時代の東北大学では上級ポストを占拠していました。これは国立大学法人の独立性を脅かすものであり、また本来プロパー職員に認められるべき昇進の機会を奪うものです。明確なルールによって規制すべきです。そして、プロパー職員が希望をもって働ける、青空の見える人事制度とすべきです。

2. 出向による人事交流は、本人の同意に基づき労働条件低下がないように行うこと。

　現行就業規則は配転と出向を同列視し、大学が職員に無条件で出向命令を出せるようにしています。出向は、本人の個別同意に基づくことを明記すべきです。また、出向する職員の労働条件を低下させない保障を明記すべきです。

3. 昇進における男女の格差を、数値目標を持って是正すること。

　現在、職員の昇進については、男女間に差別が存在するといわざるを得ない状態です。とくに男女共同参画の推進を標榜する東北大学では許されるものではありません。明確な数値目標を掲げて改善すべきです。（2008年4月1日現在。組合にて編集。）

※「課長補佐等」には事務長補佐が含まれます。
職名	部長	課長	事務長	課長補佐等	専門員	専門職員	係長	主任	一般職員
女性比率	0.0%	4.4%	0.0%	3.7%	20.0%	17.5%	14.4%	40.5%	43.6%

4. 組織改編に際しては、事務職員の配置と勤務体制を改編計画に必ず組み入れ、過大な負担がかからないようにすること。

　組織改編に際して研究・教育組織やその運営を検討する際に、事務職員の配置、勤務態勢、そのコンプライアンスの検討が抜け落ちていることがしばしば見られます。その結果、超過勤務や無理な業務負担、専門家の不足が引き起こされます。改編計画には事務職員の配置と勤務体制に無理がないかどうかのチェックを必ず組み入れるべきです。

４）技術職員

1. 技術職員の研究・教育の中での位置付けを明確にし、研究・教育に直接かかわる業務をおこなう技術職員の標準職務表を作成すること。また専門的技術業務をおこなう技術職員の給与表を新設すること。

　研究・教育は、教員、技術職員、事務職員の3者の協力共同の関係で遂行することを前提に、教員の技術的要求に応える専門技術業務内容を標準職務表に位置づけ、専門的な職務にふさわしい給与表を設定することが必要です。

2. 2009年4月に設置された総合技術部について、事前の説明会での技術職員の意見とそれに対する検討結果を公表すること。

　技術職員のあり方検討の趣旨は、本来、研究・教育の中での位置付けを明確にすることにありました。各部局技術部の意見や実態をふまえず、技術職員自身の声を無視したやり方はモチベーションを下げることになります。人事の一元管理のもと部局に定員削減を押しつけるようなことがあってはなりません。

3. 技術職員の人事評価は、評価者の選定、評価者訓練等について、専門性を踏まえたものとすること。評価結果は、本人に文書でフィードバックすること。

　技術職員は専門技術を基礎とした職務に従事しているため、評価者と本人の合意で定めた、専門性を踏まえた目標と評価項目を設定し、それに対する達成度と行動過程によって評価することが必要です。また、評価は被評価者の日常活動を見ることができ、かつ適切な職責についている者でなければなりません。評価者訓練をしないままに評価を実施すべきではありません。

５）病院職員

1. 病院の稼働実態に見合った人員増および適切な人員を配置すること。

　看護師などの病院職員の労働は過酷な状態にあります。十分な看護が出来ないことはもちろん、いつ医療事故が起きても不思議ではないとさえ言えます。その最大の原因は慢性的な人手不足であり、年次有給休暇が消化できる要員数をふまえた適切な人員配置がぜひとも必要です。

2. 大学病院における「7対1」看護体制実施後の勤務実態を調査し、公表すること。

　「7対1」看護体制実施後も、職員には過大な負担がかかっています。部署ごとの患者数、看護師配置数、年次有給休暇取得数、超過勤務時間、実質的に休憩できている時間などを調査し、事実に基づいた対策を打つべきです。

3. 看護師・薬剤師などの特定有期雇用職員は正職員にすること。

　大学病院では医療職員の配置職員数（旧定員）が圧倒的に不足しているため、新採用の看護師や薬剤師、放射線技師、理学療法士などが特定有期雇用職員となっています。2008年度までは「任期付正職員」と呼ばれましたが、2009年4月の特定有期雇用職員就業規則制定によって、労働条件の引き下げは一切なしに特定有期雇用職員になったと説明されています。この身分は、「常時勤務する職員のうち期間を定めて雇用される者」と定義されています。

　しかし、法人に移行し、労働基準法が適用されるいま、このような身分差別的定員管理は許されません。希望をもって東北大学病院の職員となった人の勤労意欲を高めるためにも、全て採用時から正職員とするべきです。

4. 正職員化までの暫定措置として、新採用看護師等の特定有期雇用職員の雇用期間・更新限度を撤廃すること。必要な定数枠を確保し、解雇・雇い止めを行わないこと。

　看護師等を、雇い止めのありうる特定有期雇用職員とすることには合理的理由はなく、雇用不安を招いています。

5. 看護師の増員を行い、医療事故のリスクを高める二交代制を廃止すること。現在行われている二交代制については、三交代制を希望する看護師の部署からのしめだしが起きないようにすること。

　三交代制のままで、年次有給休暇がきちんと取れて夜勤数も減るならば、長時間の夜勤を集中力の低下を懸念しながらやりたいと考える看護師は少ないでしょう。二交代制のもとで医療事故が発生してしまうことを恐れます。また、二交代も三交代も勤務形態の一つの選択肢にすぎないのですから、三交代制を希望する看護師が職場にいづらくなるような状況は、決して作ってはなりません。

6. 年次有給休暇を無理なく取得できるようにすること。超過勤務の縮減をはかること。

　増員の実現という根本的解決に至る前でも、職員が年次有給休暇を取ることさえままならない状態や、長時間労働で疲弊している状態について、緊急の措置をとるべきです。

7. 職員の産休、長期研修等については、人員を補充すること。

　看護師の産休や長期研修があった場合､現在はその代替人員が補充されないため、残った者に過度の負担がかかっています。法人側は「産休、育休、4カ月以上の研修者を考慮しながら、代替人員を保障して看護配置をしている」と言いますが、実際には、「正職員」「任期付き職員」の中から、育休・長期研修の看護師がいる部署に多く配置しているだけです。全体の人数が足りないからと配置されない部署も少なくありません。このような状態は休暇を取りづらくもしており、職場環境の悪化をもたらします。適切な人員の補充が必要です。

8. 業務に必要な研修のための時間と費用は大学が保障すること。

　病院職員は常日頃から最新の技術などを身につける必要があり、多くの研修を受けています。しかし、そのための時間はたいてい年次有給休暇を利用しなければならず、またその費用も自費が多くなっています。大学病院の質を高めるために行われるこうした研修は、その時間と費用を大学が保障すべきです。

9. 医療事故を起こさないための環境整備をはかること。

　現在の大学病院はいつ医療事故が起きても不思議ではない環境にあります。これを改善して、たとえば、医師の指示について指示簿と入力されたデータとが異なることがないようにすること、二度手間がなく使い勝手の良いコンピュータシステムを構築すること、ヒューマンエラーを起こさないようなシステムの策定等が必要です。

６）准職員・時間雇用職員等

1. 1980年7月以前採用の准職員を正職員に転換すること。そのための中期的な計画を立てること。

　准職員の勤務実態は、週40時間という点でも業務内容という点でも正職員とほとんど変わりません。パート労働法によると、そのような職員は労働時間が短くても正職員と同等の待遇にすべきであり、週40時間労働であれば言うまでもありません。法人側が、特定有期雇用職員就業規則の検討段階で、「週４０時間勤務である准職員は、職員就業規則が適用される職員と比べて、その処遇に格差があり、同一労働同一賃金原則の根底に存在する均等待遇の理念に違反したり、給与の根本基準に違反するなどして、その格差が問題とされることがあり得るため、准職員の労働条件を見直す」と認識していたことは重要です。総定員法の拘束もすでになくなったいま、これまで長年にわたって正職員と対等に東北大学を支えてきた准職員を正職員とすべきです。

2. 准職員・時間雇用職員から正職員への登用枠を拡大すること。

　本学の登用試験は2007年度から実施されていますが、毎年1名～4名程度しか正規登用されていません。これでは積極的に正規登用を拡大しているとはいえません。登用枠を拡大して、多くの准職員・時間雇用職員に正職員への道を拓くべきです。

3. 准職員を特定有期雇用職員として位置づけること。日給月給制を月給制に転換すること。准職員の諸手当を正職員と同等にすること。昇給速度や退職手当を正職員と同等の基準で行うこと。

　１で指摘したように、准職員の勤務実態は、週40時間という点でも業務内容という点でも正職員とほとんど変わりません。したがって、処遇の決定基準を正職員とそろえるべきであり、そうしないことは説明のつかない差別としか言いようがありません。

4. 准職員等の病気休暇を有給とすること。准職員、時間雇用職員へもメンタルヘルスプログラムを適用すること。

　本学では、「大学の業務等が複雑・多様化し、職員への肉体的・精神的負荷が増大しており、また、職場内の意思疎通（コミュニケーション）が不足しがちになること等が要因となってメンタルヘルス不調者が増加傾向にある」として、予防、対応、復帰等のメンタルヘルスプログラムが実施されています。ともにフルタイムではたらく正職員と准職員を区別する理由がなく、実施しないことは差別としか言いようがありません。長期勤続の時間雇用職員にも実施すべきです。

5. 時間雇用職員に勤務時間・勤続期間に応じた一時金・退職金制度を導入すること。実施可能なことが明らかな週30時間分の一時金は速やかに支給すること。

　時間雇用職員への30時間分のボーナス支給は、前向きに検討され、部局長も29人中26人が賛成を表明しました。しかし、総長・役員会は、たいへんな不況なので世間の理解を得られないからという理由で検討を「凍結」しています。まったく理由になりません。時間雇用職員の労働意欲を高めるために、一定の一時金（ボーナス）を出し、また勤続期間に見合った退職金を支給することは、一般企業でもしばしばみられることであり、むしろ必要なことです。

6. 准職員・時間雇用職員を、部局毎に必要な配置職員数の計算に含めて、その人件費を本部から部局に配分すること。

　現在の本学の予算制度の下では、部局における准職員・時間雇用職員の処遇改善と部局の研究・教育経費を同一の財源から行わねばならず、部局の教職員の間に不必要な葛藤を持ち込んでいます。准職員・時間雇用職員が常に一定数必要な状態である以上、部局毎にその必要な職務と人員を明らかにして、配置職員数の独自の項目とすべきです。そして、本部から部局にその人件費を責任を持って配分すべきです。

7. 時間雇用職員の３年を超える更新申請について部局の意向を尊重すること。時間雇用職員の通算雇用期間を３年から５年に延長すること。

　時間雇用職員の中には、職場からも3年経過後も継続して働くことを期待されている人がいます。しかし部局から本部に3年を超える更新の申請がされる場合、なかなか本部の許可がおりず部局長等が苦労しているようです。優秀な時間雇用職員が安心して働き続けられるよう運用を改善すべきです。

1. 労働協約に基づいて組合と団体交渉を誠実に行い、交渉の場での発言について責任をもつこと。

　法人と組合は労働協約を締結し、誠実に団体交渉を行うことを約束しています。これを誠実に守り、交渉を行うことを求めます。また、団体交渉に臨む役員は、労使関係について権限を委任されていることをはっきりさせ、公式発言に責任を負うべきです。

2. 賃金や人事制度の重要な変更について、十分な交渉期間を確保すること。労働契約法を遵守すること。

　賃金改定・人事制度の変更が、必ずしも十分な交渉期間を持って提案されていません。また、法人側が労働条件の不利益変更を提案する際には、労働契約法にもとづいて、労働者が被る不利益の程度、使用者側の不利益の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況等についてきちんと説明しなければならないのに、これを軽視して交渉不十分なまま、一方的に実施することがあります。しかし、団体交渉において、人事院勧告があるという理由だけで不利益変更を正当化することは、実質的な団交拒否であり、不当労働行為とさえ言えます。法人側は、重要事項については組合と十分に話し合えるように余裕を持って提案すべきです。そのことは、問題点の洗い出しと改善が行えるという意味で、大学全体にとってよいことのはずです。

3. 独立した法人にふさわしい人事政策をもち、人事院勧告に安易に追随しないこと。

　東北大学をよくするために労使がともに努力する必要がありますが、その際、東北大学に相応しい制度設計を自分たちの頭で考えていくことが重要です。人事院勧告の内容については取り入れるべきこと、取り入れるべきでないことをよく吟味し、また人勧待ちにならずに制度改革を行っていかねばなりません。

4. 組合加入妨害等の不当労働行為は絶対にしないこと。また、新規採用教職員の研修の場において、組合紹介の場を設けること。

　組合は、必要な場合には大学に苦言を呈し、また改善を求めますが、健全な労使関係を築いて、場合によっては対政府交渉等で大学と共同歩調を取ることもあります。すばらしい東北大学を実現する上で、組合の存在は重要です。そのために、管理職による組合加入妨害や脱退強要等の不当労働行為は、絶対に許されません。また、新規採用者に組合を紹介する機会をもつことを要求します。