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声明 一方的かつ重大な不利益変更に抗議する

 役員会は、10月28日、組合と過半数代表者の批判にまともに応えることなく就業規則(給与規程、寒冷地手当支給細則、本給支払細則、准職員等給与規程)を変更し、寒冷地手当の削減・廃止を強行した。

改定内容
地域 2004年 2005年 2006年 2007年以降 最終的には
仙台等 従来の額 前年の額 - 4万円 毎年、前年の額 - 3万円 廃止
青森、遠野、鳴子、秋田 従来の額 - 3万円 毎年、前年の額 - 2万円 従来の額の約6割に

※いずれも今年から分割払い(11、12、1、2、3月。但し准職員は12、1、2、3、4月)

 そもそも就業規則は本年4月に制定されたばかりである。寒冷地手当制度は、就業規則制定から一度も実行されずに不利益変更されてしまったのである。その結果、青森市、遠野市、鳴子町、秋田市に働く教職員は厳寒の季節を前にして突然3万円もの生活費が奪われ、仙台市等についても、2006年以降、寒冷地手当は漸減・廃止されることになった。実に総額3億円を超える重大な不利益変更が一方的に決定されたのである。

 組合は、寒冷地手当の削減・廃止に断固反対の意思を示してきたが、あらためて、この役員会決定に対して抗議の意思を表明するものである。

役員会が自主的に判断し、10月29日に従来通り一括支給した大学もある

 自主的な人事制度が国立大学法人の第一の原則であることは言うまでもない。問題は、それでも政府の要請や給与法の改正があれば人勧に準拠すべきなのかであるが、これは当然否であろう。小泉首相は、国立大学法人への文科省の指導について「強力な行政指導が行われたり、行政指導による画一的改革が進められるなどの事態にはならない」と国会で答弁しているが、閣議決定による要請についても当然同様のはずである。

 注目すべきは、今回の寒冷地手当制度変更をめぐっても、自主的に判断して従来通りの支給を実施した大学(福島大、東京大、富山大、九州大)も現実にあるということである。またシステム上やむなく一括支給日を1ヶ月後にしたものの基本的に従来制度を維持した大学(山形大)や、削減・廃止への経過措置を盛り込まずに分割支給のみを実施した大学(宮教大)もある。

※大学共同利用機関法人自然科学研究機構・国立天文台では、従来通りの寒冷地手当支給が維持された。
寒冷地手当の支給状況 大学
従来通り 10/29に従来の額が一括支給された 福島大
東京大
富山大
九州大
ほぼ従来通り 11/末一括支給.他の変更はなし. 山形大
分割支給のみ実施 11-3月分割支給.減額予定なし. 宮教大
人勧通りの寒冷地手当改悪 11-3月分割支給.減額・廃止の経過措置含む. 北海道大
弘前大
岩手大
秋田大
東北大

本学の役員会は最後まで具体的な経営判断を示さなかった

 組合は10/21・ 10/23・10/28に要請書等を大学に提出し、団体交渉も10/22・10/25に行い、寒冷地手当削減・廃止を中止して自主的な経営判断を示すよう再三にわたって役員会に求めてきた。単に要求しただけではない。寒冷地増嵩費の調査を実施するための参考資料も提示し、また今年度直ちに著しい不利益に直面する浅虫(青森)・鳴子地区教職員の連名による「寒冷地手当の取扱いについての要望書」(浅虫地区の全教職員、鳴子地区の教職員過半数、各1通)も提出した。しかし、役員会は最終決定にいたるまで何らの具体的な経営判断を示すこともなく、人勧準拠は「総合的に判断した結果」だと言っている。その説明らしきものとしては、変更された就業規則の周知にあたって北村理事から大学の「基本的考え方」(10月29日付、就業規則の変更にあたって)(学内限定アクセス)が示されているが、これはむしろ、いかに本学の役員会が自主的な経営判断なしに人勧と政府の要請を受け入れたかを如実に示すものとなっている。

 たとえば、人勧について、「民間の賃金との適正な均衡を確保することを基本(民間準拠)として、同様な条件にある官民の給与を比較調査、分析の上で、国会及び内閣に対して行われているもので、勧告の内容には合理性がある」「今回の寒冷地手当の改正に当たっては、大学としても改正内容に妥当性、客観性があるものとして人事院勧告に準拠することとした」としているが、要するに人勧だから従うというものである。しかも相変わらず独立行政法人通則法第63条を人勧準拠の根拠としているが、この第63条こそは第57条と対比して非公務員型の国立大学法人では人勧や給与法に準拠する必要はないという根拠なのである。

※第63条(非公務員型独立行政法人職員の給与)=当該独立行政法人の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない

※第57条(公務員型独立行政法人職員の給与)=一般職の職員の給与に関する法律 (昭和二十五年法律第九十五号)の適用を受ける国家公務員の給与民間企業の従業員の給与当該特定独立行政法人の業務の実績及び中期計画の第三十条第二項第三号の人件費の見積りその他の事情を考慮して定められなければならない

 また、今年度実際に浅虫や鳴子地区等の教職員46名から削減した140万円ほどの金額は、決して国に返還しなければならないわけではなく、渡し切りとなっている運営費交付金の一部として大学がそのまま使用できるのである。従って、これを教職員に支給したからといって、それは予算通りであって、大学経営に重大な影響を及ぼすものでは全くない。役員会が行った経営努力とは、まさに教職員の賃金を削って自由になる金を内部に溜め込むことでしかない。

 さらに、「基本的考え方」は、本学において法人化前の労働条件が基本的に維持されていることを、政府の要請に応え人勧に準拠する理由にあげているが、それはあまりに法人移行時の組合や過半数代表者との協議過程を無視した一面的な見方ではないだろうか。従来水準の労働条件が維持されたのは、何よりも法人移行に伴う不利益変更は許されないという大原則が尊重された結果である。役員会は、組合が就業規則組合案を含めていかに多くの建設的な提案を大学に示し、両者の間でいかに頻繁な意見交換が行われたかを忘れてはならない。また准職員等の承継にあたってまさに大学自身が「既得労働条件維持の要請」を尊重したことも思い出されたい。

一方的かつ重大な不利益変更は在職者の労働契約を拘束しない

 本学では、各事業場において、各職層のバランスを尊重した民主的な過半数代表者・同候補者の選出に努力している。就業規則の改定にあたって大学側と過半数代表者等が十分な話し合いを重ねるべきことは当然である。役員会が、経営協議会の審議をふまえた責任ある提案をし、十分な協議日程を確保することはその前提であろう。いわんや組合との団体交渉には、法人化後の労働条件決定システムの中で最も重要な法的位置付けがされており、組合の質問や提案にまともに回答することなく就業規則改定手続きのみを急いだことは、とても誠実な交渉姿勢だったとは言えないだろう。

 また、就業規則の不利益変更にあたっては、「高度の必要性に基づいた合理性」が使用者側に当然求められる。つまり、従業員の被る不利益の程度、必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他の関連する労働条件の改善状況、多数労働組合または多数従業員との交渉経緯、他の労働組合または他の従業員の対応、不利益変更内容に関する同業他社の状況等をふまえることであり、これは判例上確立したルールである。ところが、役員会は組合の要請にも拘らず、「高度の必要性に基づいた合理性」について全く説明しなかったのである。

 なお、大学側は、最終決定までは従来通りの一括支給の準備も進めていると組合に説明していたが、それが偽りだったことも今では明らかになっている。10月25日段階での提案内容周知も少なくとも複数の事業場で実施されていなかったことがわかっている。まさに偽りと不誠実な折衝過程の上に強行された、一方的かつ重大な不利益変更だったのである。こうした就業規則の一方的かつ重大な不利益変更は、判例からしても大きな疑義を孕むものであり、我々は、これを強行した役員会の横暴に強く抗議する。

2004年11月9日

国立大学法人東北大学職員組合


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